東京高等裁判所 昭和59年(う)1135号 判決 1985年12月05日
控訴人 被告人
被告人 網代敏雄
弁護人 丸井英弘 外一名
検察官 宮崎徹郎
主文
本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中一三〇日を原判決の刑に算入する。
当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人丸井英弘、同林陽子が連名で提出した控訴趣意書(ただし、その第一の二を除く)に、これに対する答弁は、東京高等検察庁検察官検事宮崎徹郎が提出した答弁書にそれぞれ記載されたとおりであるから、これを引用する。
一 控訴趣意第一の一のうち法令の適用に関する理由不備の主張について
論旨は、要するに、原判決は、その「法令の適用」において、
「判示第一の行為 麻薬取締法六六条一項、二六条一項
判示第二の行為 麻薬取締法六六条一項、二四条一項」
と判示するが、リゼルギン酸ジエチルアミド(以下その塩類を含め「LSD」という)を譲り受け又は譲り渡した行為に対する法令の適用としては、少なくとも右法条に加えて、麻薬取締法二条一号、同法別表合成麻薬五三号、麻薬を指定する政令(昭和三八年政令三二七号)二条七号を明示しなければならないのに、原判決はこれを欠いているので、主文を導き出した法的根拠を示すのに不十分であつて、理由不備であるというのである。
そこで検討すると、刑訴法三三五条一項が有罪判決に法令の適用を示すべきことを要求しているのは、主文の刑(その執行猶予及び免除を含む)を導き出した実体法上の根拠を明らかにさせる趣旨であると解されるから、抽象的にいえば、同条により判決に法令の適用を示すには、罪となるべき事実として認定した被告人の所為がいかなる犯罪の構成要件に該当するか、そしてそれに基づきどのようにして刑を導き出したかを法令の条項を示して明らかにする必要がある。ところで本件についてみると、麻薬取締法二六条一項は、所定の除外事由がなければ「麻薬を譲り受けてはならない」と、同法二四条一項は、所定の除外事由がなければ「麻薬を譲り渡してはならない」と規定し、同法六六条一項は、右各規定に違反した者は七年以下の懲役に処する旨規定する。原判決の掲げる右各法条により原判示「罪となるべき事実」に認定された被告人の第一(麻薬の譲受け)、第二(同譲渡し)の各所為の該当する構成要件及びこれに対する法定刑は明確である(なお、併合罪の処理に関する総則規定の摘示は本件の争点でないから、これについては触れない)。所論は、右各法条からは同法にいう「麻薬」とは何であるのか不明であり、これだけではLSDがこれにあたるということはできないと主張する。なるほど、その点についてみると、麻薬取締法二条一号は「麻薬」とは「別表に掲げる物をいう」と定めているが、同法別表にはLSDが特定して掲げられておらず、同表合成麻薬五三号に「前各号に掲げる物と同種の濫用のおそれがあり、かつ、同種の有害作用がある物であつて、政令で定めるもの」と定められており、右委任に基づき制定された麻薬を指定する政令二条七号において「リゼルギン酸ジエチルアミド及びその塩類」が麻薬に指定されているのであるから、原判示事実に対する法令の適用としては、これらの規定をも掲げるのが懇切な方法であり、そうするのが適当であるとも考えられる。しかしながら、右の同法二条一号は、同法が取締りの対象とする「麻薬」の定義規定にすぎないものである。このような定義規定は、本件におけるように犯罪構成要件の内容を明らかにする機能をも有しているけれども、それ自体は刑罰法規でもその一部でもないのであるから、このような規定まで判決に明示しないでも刑訴法三三五条一項の趣旨に反しないと解するのが相当である。例えば、銃砲又は刀剣類の所持罪の事犯において、銃砲刀剣類所持等取締法二条の定義規定は判決に明示することを要しないと解されるのであつて、本件もこれと同様である。これに反し、構成要件の一部を補充する規定、例えば酒気帯び運転罪における身体に保有するアルコールの程度を定める道路交通法施行令四四条の三は、これを判決に明示しなければならないが、本件はこれと異なるのである。したがつて、原判決は前記麻薬取締法二条一号及びその引用する同法別表並びにその委任にかかる前記政令の各規定を掲げていないけれども、そのことは刑訴法三三五条一項に違反しない。そして、原判決が右各規定に従いLSDを麻薬と認定したものであることはその「罪となるべき事実」から十分にうかがうことができ、前記のとおりその「法令の適用」に掲げる法条により右事実に適用した構成要件及び法定刑が明らかにされており、原判決の理由は所論指摘の点に関して刑訴法の要求を満たしていると解されるのであるから、原判決に所論のような理由不備の違法はなく、論旨は理由がない。
二 控訴趣意第一の一のうち憲法三一条違反の主張について
論旨は、要するに、犯罪構成要件の人権保障機能から考えて、いかなる行為が犯罪に該当するかは形式的意味の法律で明示されなければならないのであつて、本件に適用される麻薬取締法二条一号、同法別表合成麻薬五三号は、構成要件の内容を政令に白紙委任しているから憲法三一条に違反し、無効であり、原判決には理由不備の違法があるというのである。
そこで検討すると、論旨は原判決の理由不備をいうが、その内容からすると法令適用の誤りを主張するものと解されるので、右主張について判断する。なるほど憲法三一条は、犯罪となる行為及びこれに対する刑罰は国会の定める法律によつて規定されなければならないとの趣旨を含むものと解されるが、他面、憲法は、その七三条六号但書において「特にその法律の委任がある場合」には内閣の制定する政令で罰則を設けることを認めている(最高裁大法廷昭和二五年二月一日判決、刑集四巻二号七三頁参照)。したがつて、法律で政令に罰則を設けることを一般的又は包括的に委任することは許されないが、特定の事項に限定してこれを委任することは許されるのであつて、この場合は憲法三一条の前記原則の例外にあたると解される。本件について考えると、麻薬取締法二条一号は、前記のとおり定義規定であつて、それ自体は罰則すなわち刑罰法規ではないが、同法の定める罰則の構成要件となつている「麻薬」の概念を規定しているところから、前記憲法の規定の制約を受けるものと解するのが相当である。そして、同法二条一号の引用する同法別表は、麻薬をあへんアルカロイド系麻薬、コカアルカロイド系麻薬及び合成麻薬に分け、そのそれぞれに属する物の名称を列挙したうえ、政令にそれ以外の物を麻薬に指定することを委任しているけれども(合成麻薬については五三号)、右の委任は、特定の事項に関するものであり、しかも法律に列挙された麻薬と「同種の濫用のおそれがあり、かつ、同種の有害作用がある物」という限定を付し、麻薬指定の具体的基準を示しているのであるから、もとより憲法七三条六号但書の委任に該当し、所論のように憲法三一条に違反するものではない。論旨は理由がない。
三 控訴趣意第一の一のうちLSDは麻薬取締法にいう麻薬に該当しない旨の主張について
弁護人の弁論をも参照すると、論旨は、要するに、LSDは、麻酔作用がなく身体的依存性もないから薬理学的にみて麻薬ではなく、また精神的依存性も低いので濫用のおそれがなく、個人的及び社会的な危険性が極めて低く、その毒性も極めて低い物であり、反面それは使用者に至高体験をもたらすことを容易にするという有用性があり、またアルコール依存症、うつ病、精神分裂病、子供の自閉症、てんかん等に対する精神医療上の効果があるから、LSDは麻薬取締法別表合成麻薬五三号の定める「前各号に掲げる物と同種の濫用のおそれがあり、かつ、同種の有害作用がある物」との要件に該当する物質ではないのに、LSDを同法にいう麻薬であるとして被告人を有罪とした原判決には理由不備の違法があるというのである。
論旨はこれを理由不備の主張であるというが、その内容は、結局原判示被告人の各所為に原判示麻薬取締法の罰則を適用することはできないということに帰着するから、法令適用の誤りを主張するものと解される。そこで、原審記録を調査し、当審における事実取調べの結果を参酌して右主張につき検討する。
(一) 麻薬取締法二条一号は、前記のとおり麻薬を定義するのに列挙主義を採り、その内容にわたる定義を下していないが、同法別表で政令に指定を委任している麻薬については(合成麻薬についてはその五三号に)「前各号に掲げる物と同種の濫用のおそれがあり、かつ、同種の有害作用のある物」という要件を掲げているので、政令で指定された物が右要件に該当するものでなければ麻薬といえないことは(後記(二)の点は別として)所論のとおりであり、また、右要件を解釈するについて、あるいは右要件以外の要件として「麻薬」という用語自体が何らかの限定的機能をもつということも考えられる。所論は、LSDは麻酔作用も身体的依存性もないから薬理学的にみて麻薬ではないというので、まずこの点について考察すると、なるほど当審証人小林司はそのように供述している。そして、LSDに麻酔作用がなく身体的依存性もないことは、関係証拠に徴しても認められるところである。しかし、「麻薬」ということばは、医学用語ではなく(南山堂医学大辞典、一九五四年版)、また薬理、保健、医療の概念ではなく、司法、行政ないし社会的に定められる概念である(別紙目録検察官提出7(三) 逸見武光「麻薬問題の概観」四〇四頁、四〇五頁)といわれているから、所論にはこの点ですでに疑問がある。そして、薬理学において一般に麻酔作用があり、かつ身体的依存性のある物が麻薬であるとされているとしても、麻薬取締法一条が「麻薬の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もつて公共の福祉の増進を図ることを目的とする」と定めている趣旨にもかんがみると、同法にいう麻薬が麻酔作用及び身体的依存性を有する物に限定されているとは解されない。かえつて同法は、一般に、濫用されることにより慢性中毒(同法二条二二号参照)を引き起こす性質のある物、すなわち反復使用により身体的又は精神的にそれに対する欲求が習慣化する依存形成性の薬物で人の精神又は身体の健康を害し、社会的に有害なもの(覚せい剤等特別の法律で規制されているものを除く)を麻薬に指定していると考えられるのであつて、それが社会生活上の麻薬という用語の意味からかけ離れているとは考えられない。実際にも、麻薬取締法が別表に掲げる薬物の薬理作用は様々であつて、例えば、別表コカアルカロイド系麻薬三号のコカインは、別表あへんアルカロイド系麻薬一号のモルヒネ、同二号のジアセチルモルヒネ(いわゆるヘロイン)などとともに一般に麻薬の代表のようにいわれているが、コカインの薬理作用は、局所適用により強力な局所麻酔作用を示し、全身適用時には強い中枢神経興奮作用を示し、使用者がその際に生ずる多幸感を求め、またその後に来る不安、抑うつ、疲労脱力感から逃避しようとするために強い精神的依存性を形成するが、身体的依存性は形成しないのである(別紙目録検察官提出7(五) 栗原久「コカインの薬理作用」四三一頁、四三四頁、同(六) 加藤信「コカイン依存の臨床」四三八頁)。それゆえ、LSDに麻酔作用も身体的依存性もないことから、直ちにこれが麻薬取締法にいう麻薬にあたらないということはできない。
(二) なお、所論は、前記麻薬取締法別表合成麻薬五三号はその要件として、<1>前各号に掲げる物と同種であり、<2>濫用のおそれがあり、<3>かつ同種の有害作用のある物であり、<4>政令で定めるものであることを要求しているとして、これを前提に立論している。しかしながら、右五三号の規定は、その文言自体からみても、政令で定めるものという要件のほか、前各号に掲げる物と同種の濫用のおそれがある物で、かつ、前各号に掲げる物と同種の有害作用がある物という二つの要件を定めているものと解すべきであつて、所論のように当該の物が「前各号に掲げる物と同種」であることを要件とするものではない。このことは、右規定(あへんアルカロイド系麻薬二〇号、コカアルカロイド系麻薬四号の同様の規定を含めて)の立法の経緯からしても明らかである。すなわち、麻薬の製造制限及び分配取締りに関する条約の範囲外の薬品を国際統制の下におく議定書(いわゆる国際統制議定書。一九四八年署名、昭和二七年条約第八号)が麻薬の製造制限及び分配取締りに関する条約(いわゆる制限条約。一九三一年署名、昭和一〇年条約第四号)を補完し、各当事国は、ある薬品が制限条約の適用を受ける薬物と同種の濫用のおそれがあり、かつ、同種の有害作用を生ずると認めたときは、国際連合事務総長にその旨を通知する義務を負い、また、世界保健機構(WHO)がその薬品を取り締るべきものと認定し、その旨の通告が事務総長から伝達されたときは、各当事国は、その取締りを行わなければならないと定めているので、右の国際統制議定書の要請に応ずるために前記規定が設けられたものである。それゆえ、所論が、LSDが薬理作用の点において「前各号に掲げる物と同種」の物でないことを理由に前記五三号に該当しないと主張するのは、失当である。
(三) 麻薬取締法別表合成麻薬五三号にいう「同種の濫用のおそれ」及び「同種の有害作用」の趣旨について考えると、麻薬取締法が麻薬として別表に掲げる薬物は、モルヒネ、ジアセチルモルヒネがいずれも鎮痛・麻酔作用と強い精神的及び身体的依存性を有し、またコカインが前述のように局所麻酔作用、中枢神経興奮作用と強い精神的依存性を有するなど、その薬理作用において様々であり、そのため人の精神及び身体に及ぼす有害作用の現れ方も一様でない。しかし、それらの麻薬を同法が規制している趣旨目的は、それらがいずれも人の精神機能に影響を及ぼし、かつその作用により精神的依存性を形成し、さらにある種の麻薬は身体的依存性を形成するために、これが濫用されるおそれがあり、すなわち社会的に認められた有用性のある用途、用法のある物でもこれによらない使い方をされる可能性があり、その結果使用者が慢性中毒に陥いるなどして、本人の精神的又は身体的健康を害し、社会に対しても害悪を及ぼす可能性があるためであると考えられるから、前記の「同種の濫用のおそれ」及び「同種の有害作用」も、薬理作用の同種であることを要求するものではなく、政令の指定する麻薬が、その薬理作用により人の精神機能に影響を及ぼす薬物であり、右に述べた意味で同法別表に列挙された麻薬と同種の濫用のおそれがあり、かつ同種の有害作用のあることをいうものと解するのが相当である。
(四) 右の見地に立ち、以下LSDの有害性、濫用のおそれ等について検討する。
当裁判所は、弁護人請求の証人小林司(精神薬理学の専門家で、日本精神衛生会理事、日本神経精神薬理学会評議員、上智大学カウンセリング研究所教授、医学博士)及び検察官請求の証人柳田知司(昭和四四年、四五年当時厚生省のLSD研究班で動物実験を行い、また厚生省の中央薬事審議会の下部組織である薬物依存性調査会の委員でもあつた。医学博士)の供述を聴き、また書証として検察官及び弁護人の提出した別紙書証目録記載の多数の文献等を取り調べた。右各供述及び書証相互の間には一致しない部分もあるが、これらを総合すれば以下の事実が認められる。
LSD(製剤化したものはその酒石酸塩LSD-25)は、人がこれを摂取すると、通常二五ないし七五マイクログラムという極微量で中枢神経系に対する作用を生ずる。摂取後四〇分ないし六〇分で作用が発現し、二ないし三時間をピークとして、通常八ないし一二時間持続する。身体面では、子宮収縮、血管収縮、眼瞼振せん、瞳孔散大、体温低下、血糖増大、目まい、脱力感などが生ずる。知覚・精神面の作用は顕著で多様であり、知覚の変化・幻覚(色や形が変わる、色彩に富んだ幻視、音に敏感、音で色が見えるなどの共感覚、幻聴、幻臭など、快いものも恐しいものもある)、時間・空間感覚の障害、気分の変化(多幸感、不安、抑うつ等不安定である)、思考障害、妄想、離人症などをもたらす。さらに、判断力の低下をきたし、通常起こりうる危険を予知する能力が妨げられ、危険を招くことがあるばかりか、妄想のため窓から飛び降りるなど生命に危険な行為に走らせることもある。これらの作用は、一回だけの服用でも起こることがあり、また大麻よりも強いものである。右のほか、LSDは、しばしば恐しい幻覚体験により本人を強い不安と恐怖(急性パニツク状態)に陥れて、錯乱、自殺企図などの行動を起こさせることもあり、また幻覚、思考障害、離人症、主体性喪失、非現実的感覚、妄想、行動障害など精神病様の症状が長く残り、そのため本人が社会に適応できず、正常な社会生活を営むことが困難になることがある。始めから精神病をもつている人に対しては、これらの作用が特に重篤である。さらに、LSDを服用しなくなつてからもその幻覚体験などが再然(フラツシユバツク)することがある。なお、LSDに染色体異常、催奇形性及び発がん性があるかどうかについては、これを肯定する研究や報告とともにこれを否定する研究や報告もあり、現段階ではこれがあることを証明するだけの資料はない。しかしそれは、内服の方法で一四ミリグラム程度で人を死に至らしめる効果をもつている危険な薬物である。以上によれば、LSDは、その中枢神経系に及ぼす精神薬理作用そのものが人の精神的・身体的健康に有害な影響を及ぼすことは明らかであり、またその濫用が人々の間に広まることによつて社会に害悪を及ぼすことも容易に推知される。これに対し、LSDの医学的有用性は、その適応領域も狭く、際立つた有用性は認められない。そして、LSDには身体的依存性はないが、低いとはいえ精神的依存性があり、耐性も急速に形成され、その消失もすみやかであるものの、異常な精神状態を体験したいという欲望も加わつて、濫用される可能性が大きい。実際にアメリカで多数の人に濫用された歴史をもち、我が国の外国との頻繁な交流及び薬物乱用の現状などからみて、研究用などの本来の用途・用法以外の使用、すなわち濫用が社会にも広まる可能性は十分に存在し、本件においても被告人らはこれを濫用したといえるのである。
(五) 右に認定したところの裏付けとして、LSDに対する国際的な規制の経緯等をみると、関係証拠によれば、アメリカでは一九六〇年代の後半ぐらいから若者たちによるLSDの濫用が始まり、麻薬の国際的統制の基本法である麻薬単一条約(日本は一九六一年に批准)をつかさどつていた国連経済社会理事会が右条約により規制されていないLSDなどの向精神剤の規制につき世界保健機関(WHO)に諮問し、WHOはその内部組織の依存性形成薬物専門家委員会で検討したうえ、経済社会理事会に属する麻薬委員会に報告し、これを受けた同委員会がWHOの代表を含む特別委員会を設置し、同委員会の「国際統制下にない向精神剤の統制に関する問題」報告が一九六六年一二月麻薬委員会で採択され、同委員会は、当該物質の統制に関する国際的な同意が不可欠であり、国連事務総長はWHO及び常設麻薬中央委員会と相談のうえLSD及び類似物質に優先権を与えてその国際的措置を含む法律的、行政的及びその他の問題を緊急事項として詳しく検討すべきであるとの決定をし、経済社会理事会に対してLSD及び類似物質の製造と取引を厳しく統制する緊急措置をとること並びに周到な医学的監視の下にその使用を学術研究及び医療目的に制限することを各国政府に要請する決議を採択するよう勧告するなどの措置を講じ、次いで国連経済社会理事会は、一九六七年五月一六日、LSD及び類似物質について、LSDの濫用が個人の健康と社会の安全にとつて非常に危険であると認めて、LSDの輸入、輸出及び生産を直ちに条約により厳しく規制し、かつその分配を当局の監督の下におく緊急措置を各国政府に懇請し、LSDを学術上の研究及び医療上の目的以外の目的に使用されないための措置をとるよう各国政府に勧告する旨の決議をしたこと、これを受けて我が国政府が、昭和四五年(一九七〇年)二月一六日「麻薬を指定する政令の一部を改正する政令」(同年政令八号)でLSDを麻薬取締法の麻薬に指定したものであること、その後政府が一九七一年に署名した国際条約「向精神剤に関する条約」では、LSDは、濫用される可能性が大きく、濫用されたときの危険性が高く、かつ医学的な有用性はないという薬物の代表的・標準的なものとしてスケジュールIに分類されており、その後WHOが諮問を受けて右分類の検討をし、一九八二年現在のスケジュール表によつてもLSDはスケジュールIに分類されていることが認められる。
また、前記証人柳田知司の供述及び別紙目録検察官提出の「一九八〇年年間報告」によれば、一九八〇年の一年間に全米でLSDを使用又は所持するなどの形で救急病院、精神病院などに運ばれ、又はこれらを訪れたという報告件数が一五四二件あり、うち四二パーセントがLSD単独のものであり、二件の死亡報告のうち一件は事故であり、他の一件は自殺と認められる。もつとも、これらの報告がすべてLSDの使用による事故と断定することはできない。
(六) 以上によれば、LSDは、その薬理作用により人の精神機能に前記のような有害な影響を及ぼし、精神的依存性を形成することから、麻薬取締法別表合成麻薬五三号にいう「前各号に掲げる物と同種の濫用のおそれがあり、かつ、同種の有害作用がある物」の要件を満たすものということができる。
所論は、当審証人小林司の証言などに基づき、純粋なLSDを適量摂取するかぎりにおいてはLSDに有害作用はないと主張するが、小林証言もそのためには錠剤あるいは紙などにしみこませた一枡を適量と信じて飲むほかはないというのであり、専門の医師が十分な配慮の上投与する場合ならばともかく、一般の人がこれを入手して摂取する場合には、純粋なものを適量という基準が守られる保証は何もなく、しかも小林証言のいうその一回分の効果だけでもすでに人の精神機能に有害な影響を及ぼしたといつて妨げないのであり、また薬物の作用には個人差が大きいことを考慮すると、一般の人の自己使用については右の一回分を適量ということさえできないというべきであるから、所論は失当である。
次に所論は、理由の一つとして、LSDには精神医療上の効果があるということを挙げる。しかし、仮にそうであるとしても、それがLSDを麻薬に指定することの妨げにならないことは明らかである。麻薬取締法は、法的規制のもとで、疾病の治療の目的で麻薬を施用することを許容しているからである(二七条)。例えばモルヒネが疾病の治療に有用であり、広く使用されていることは、顕著な事実である。LSDについては、麻薬施用者による所持及び施用も認めない方針で行政指導が行われていることが認められるが、右の所持及び施用が許容される場合があるとしても、前記判断には影響がない。要するに所論は、主張自体失当である。
所論はまた、LSDにより精神異常状態に入ること、つまり意識を変化させることは、思想・良心の自由、表現の自由という基本的人権の根底にあるものであり、これを刑罰をもつて規制することは基本的人権を拒否し、人間の存在自体を否定することにつながり、また本件においてはLSDがその使用者に意識の拡大・深化といつた向精神作用以外に人を傷つけるというような具体的な犯罪行為はなんらなかつたのであるから、麻薬取締法の保護法益である「国民の保健衛生」を全く侵害していないと主張する。しかしながら、麻薬取締法がLSDを麻薬としてその輸入、輸出、製造、製剤、譲渡し、譲受け、施用、所持等について刑罰で規制しているのは、LSDが前記のように人の健康及び社会にとつて有害であるからであつて、LSDの使用により現われる意識の変化そのものを有害な思想ないし表現などとして禁止し処罰するものではないし、右規制には十分な合理性が認められ、必要な限度を超えるものではないから、思想・良心の自由、表現の自由あるいは幸福追及の権利などの基本的人権を不当に侵すものとはいえない。また、前記のように人の精神的・身体的健康に有害な作用のあるLSDを譲り受け、譲り渡すことが国民の保健衛生ひいては社会の安全を損う危険を包蔵することは明らかであるから、たとえそれにより具体的な身体傷害等が惹起されないときでも、これを規制できることは当然というべきであり、その危険性の重大さにかんがみると、これに対する法定刑が重すぎて不合理であるとも認められないから、所論は失当である。
さらに所論は、LSDの個人的及び社会的な危険性は酒(アルコールを含む飲料)のそれに比較して格段に低いから、LSDを麻薬取締法という厳しい刑罰法規で規制することには合理性がないと主張するが、古代から人類の生活に定着している酒と、一九四三年初めてその効果が知られた合成物質で、我が国におけるその濫用者もごく少数であると認められるLSDとを同一の水準で比較することがそもそも誤りである。つまり、LSDの有害性、依存形成性が酒のそれ以上でなければ麻薬として取り締まることができないなどという論理は成り立たないのである。なぜなら、新しい有害物質の使用が次々と国民の間に普及されてゆくことが、国民の健康を損ねることは明らかだからである。そのうえ、LSDのもたらす幻覚作用等は飲酒が通常もたらす向精神作用と比較してはるかに異常性の強いものであると考えられ、また人のアルコールの摂取量はグラム単位で計測するのに適するのに、LSDのそれはマイクログラム(一〇〇万分の一グラム)単位であつて、LSDはそれほど作用が強烈で危険な物質であるともいえるのである。そして、酒は、その有害性、危険性の程度や発現形態等が広く一般に知られており、社会にそれなりの対応の姿勢ができていること、酒についても食品衛生法、酒税法、未成年者飲酒禁止法、酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律、道路交通法等によつて一定の規制措置が講じられていること、仮に酒を全面的に禁止しようとしても禁止の実効性を期し難いことなど、酒はLSDと同一に論じえないところが多いのであるから、LSDに対する刑罰による規制が酒に対するそれと比較して厳格に過ぎ、取り扱いに不均衡があるとはいえない。また、LSDを麻薬取締法によつて規制するか、他の法律によつて規制するかは立法政策に委ねられた問題であつて、上述のとおりLSDが麻薬取締法別表の定める麻薬の要件に該当し、かつ、LSDについて同法の罰則を適用すると法定刑が重すぎて不合理であるとは認められない以上、LSDを同法の麻薬に指定したことが違法であるとはいえない。右所論も失当である。
以上の次第であつて、論旨は理由がない。
四 控訴趣意第一の三(本件LSDの量に関する理由不備の主張)について
論旨は、要するに、原判決は、被告人が譲り受けたLSDを三二〇錠相当と、譲り渡したLSDを二五二錠相当と判示しているが、右一錠とは何を単位とするのか、LSDをどれだけ含有しているかについて判示しておらず、また、それらの人体に対する作用、薬物としての効用についても判断していないから、理由不備であるというのである。
そこで検討すると、原判決は、その「罪となるべき事実」において、被告人が第一「合計紙片三枚に付着する麻薬・リゼルギン酸ジエチルアミド(三二〇錠相当)を譲受け」、第二「合計紙片六枚に付着する前同様の麻薬(二五二錠相当)を譲渡した」と判示するが、その引用する別紙犯罪事実一覧表を含め、判決中に一錠とは何を指すのか、及び一錠中のLSDの含有量又は犯行にかかるLSDの総量を判示していないことは、所論のとおりである(なお、原判示第一に合計紙片「三枚」とあるのは「五枚」の誤りであり、別紙犯罪事実一覧表第一表番号3の数量欄に紙片「一枚」とあるのは「三枚」の誤りであるが、この誤認は判決に影響を及ぼさない。)。しかしながら、原判決の挙示する関係証拠に徴すると、原判示の各紙片(切り取つたものもあるが、これを切り離す前の形態)は、一片約六・四センチメートルの正方形のもので、これにLSDがしみこませてあり、碁盤目状の線によつて一〇〇の正方形の部分に区画され、その一つが一錠とされている(つまり一〇〇錠分が一シートとなつている)もので、右紙片の一錠分ずつをはさみで切りとり口に入れてしやぶり、しみこんだLSDを溶かして飲む方法で使用するものであることが認められる。原判決にいう「三二〇錠相当」等は、右の一錠分を単位としてLSDの量を示したものであることが明らかである。刑訴法上、判決にその一錠の形態等まで判示する必要はないというべきであり、また、前記のように微量でその薬理作用が現われるLSDの譲受け、譲渡し等の事犯について、犯行にかかる物件中の純粋なLSDの含有量を判示することも要求されていないと解するのが相当である。本件において、前記一錠は通常の一回の使用量と認められるから、前記の判示で犯罪の規模は十分理解できるのである。のみならず、法律上は右紙片そのものが「LSDを含有する物」として麻薬であると解されるのであるから(麻薬取締法別表合成麻薬五四号参照)、この観点から麻薬の数量が十分判示されているということもできるのである。また、このような事犯の判決において、所論のように当該麻薬が人体に対する何らかの作用、薬物としての効用を生ずるものであることまで認定しなければならないとは到底解されない。したがつて所論は失当であり、原判決に理由不備は存しないが、所論にかんがみ本件LSDが薬理作用を生ずるものであつたかどうかについて検討すると、関係証拠によれば、被告人が田中誠一から譲り受けたLSD紙片五枚及び被告人が田代栄樹ほか二名に譲り渡したLSD紙片六枚は、いずれも田中が昭和五八年一二月二七日ころアメリカの友人から郵送を受けた合計一〇七一錠相当の一角獣(ユニコーン)の絵入りのすべて同種のLSD紙片の一部で、その一部は譲受人の田代及び田代からさらに譲り受けたウイリアム・ビー・ブレビンスからそれぞれ押収されて鑑定に供され、いずれもLSDの付着することが確認されており、その効果については、被告人自身検察官に対する昭和五九年三月八日付供述調書で「目が回るというかちらつく感じがあり、私の感想としては目尻がけいれんするのではないかと思われ、その効き目が数時間続いて車の運転をしてはあぶないと感じていた」と供述し、また田代は本件LSD紙片一錠半位を食べたときの効果を「自分の身体が自分の身体でないような感じがして歩くこともできなくなり、まわりの物がゆがんで見えたり、ブーンと耳鳴りがしたり、頭で考えることが進まなくなつたり、悪い面ばかり考えたりするといつた効果が出て来て、それが一〇時間位も続いてしまい満足に仕事もできませんでした」と供述し、田代と同様に被告人から本件LSD紙片を譲り受けた杤本亨も「動悸がして落ち着かず眠れない」と供述し、さらに前記田中も「買受け人から効力がなかつた旨の苦情を受けたことはなかつた」と供述しており、被告人も同様に譲り渡した者から効かなかつたと文句をつけられたことはなかつた旨供述しているのであつて、これらの事実を総合すると、原判示各紙片に付着したLSDが人に対する薬理作用を発現するものであつたことは明らかである。したがつて、論旨は理由がない。
五 控訴趣意第二(訴訟手続の法令違反の主張)について
論旨は、要するに、ウイリアム・ビー・ブレビンスから押収されたLSD紙片は、憲法三一条、三五条、刑訴法一九七条に違反する違法な捜索により発見収集された違法収集証拠であるから、これを鑑定した鑑定書などには証拠能力がなく、証拠から排除されるべきであるのに、これを犯罪事実認定の資料とした原審の訴訟手続には判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反があるというのである。
そこで検討すると、司法警察員小林俊行作成の現行犯人逮捕手続書及び司法警察員沼澤敏明作成の昭和五九年二月一〇日付捜索差押調書の各謄本によれば、右LSD紙片の捜索差押の状況は以下のとおりである。神奈川県横須賀警察署派遣司法警察員は、昭和五九年二月一〇日午後六時四五分ころ、東京都福生市福生七七九番地の七マクドナルド二階通路において、ブレビンスに対する大麻取締法違反被疑事件の捜索差押許可状に基づき、同許可状を同人に示したうえその着衣・所持品を捜索中、同人の赤色ジヤンバー左腕ポケツト内の茶色封筒の中からサランラツプに包まれた青色動物模様及び格子模様の入つた紙片一枚を発見し、その包装状態及び格子模様の形態から、司法警察員の過去の経験に照らし同紙片がLSDであると思料し、ブレビンスに「これは何だ」と質問したところ、同人は「グラフイツクペーパー」と答えたが、落ち着かない態度を示していたので、LSD試薬の説明をしたうえ、同人の面前で紙片の一目盛分を切りとつて予試験を実施したところ、瞬時に同紙片がLSDの反応を示したので、同日午後六時五五分ころ、その場で同人をLSD所持(麻薬取締法違反)の現行犯人として逮捕し、その際右紙片等を差し押さえたものである。右経緯によると、ブレビンスの着衣ポケツトからLSD紙片が発見されたのは、大麻取締法違反被疑事件の捜索差押許可状に基づく適法な捜索の結果であつて、右発見までの過程に違法があつたことは認められない。その後右紙片につきLSD試薬を投じて予試験を実施した行為は、右紙片が大麻でないことは司法警察員にも明らたであつたから、右捜索差押許可状の執行ということはできないけれども、その形態等からこれをLSD紙片であると思料した司法警察員がブレビンスに質問し、その落ち着かない態度を見ていよいよLSD所持の疑いを強め、右予試験を実施したものであること、司法警察員はこれを実施するについて予めLSD試薬の説明をしていること、その際ブレビンスからこれを拒絶するなんらの意思表示もなされなかつたことなどの事情に徴すると、右予試験は、司法警察員が合理的に判断しブレビンスがLSD所持の罪を犯しているとの強い疑いを抱いて、職務質問に附随して実施したものであり、ブレビンスの意思を制圧するなどの強制にわたるものではなかつたと認められるのであるから、右のように犯罪の濃厚な嫌疑が存在し、かつ右予試験を行う必要性、緊急性の強かつた本件において、これによつて侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮すれば、職務質問に附随してこれを行うことが許容される範囲内のものであつたと認められる。そして、右予試験の結果右紙片がLSD紙片であることが直ちに判明したため、司法警察員がブレビンスをLSD(麻薬)所持の現行犯人として逮捕し、その際その現場でした右紙片の差押手続になんら違法はないから、これを鑑定した鑑定書に証拠能力があることは明らかである。論旨は理由がない。
六 控訴趣意第三(量刑不当の主張)について
論旨は、要するに、被告人に対し懲役二年の実刑を言い渡した原判決の量刑は重過ぎて不当であるというのである。
そこで、原審記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも参酌すると、本件は、被告人が、法定の除外事由がないのに、昭和五八年一二月二八日ころから昭和五九年二月八日ころまでの間に前後三回にわたり原判示田中誠一から麻薬であるLSD紙片合計五枚三二〇錠相当を譲り受け、さらに、昭和五九年一月一〇日ころから同年二月九日ころまでの間に前後六回にわたり原判示田代栄樹ほか二名に対し麻薬であるLSD紙片合計六枚二五二錠相当を譲り渡したという事案であつて、被告人が譲り受けあるいは譲り渡した回数及び量はかなり多く、また杤本亨や中村茂樹など被告人が勧めるまでLSDを経験したことのない者に譲り渡したほか、田代がさらに他に譲渡転売することを知りながらこれに譲り渡すなどして、LSDの害悪を社会に拡散したこと、田中から一錠当り一五〇〇円で譲り受け、これを田代に一八〇〇円ないし二〇〇〇円で、杤本や中村には二五〇〇円で譲り渡すなど、自分の使用分程度を浮かすつもりであつたにせよ、利得の目的もうかがわれること、被告人には本件当時大麻吸引の事実もあり、薬物に対する親和性がうかがわれることなど記録に現れた本件の罪質、動機、態様、回数などに徴すると、犯情は悪質である。そして、LSDがヘロインやモルヒネほどではないにしても、濫用のおそれのある有害な薬物であることは上に述べたとおりであり、これがかつてアメリカで流行し、多くの若者を社会不適応の状態に陥れたことにもかんがみると、被告人の本件犯行は社会に対する危険性の大きいものであつたと考えられる。それゆえ被告人の刑責は重いというべきである。また、被告人からLSDを譲り受けた田代栄樹が懲役一年六月に処せられていることとの均衡も考慮しなければならない。そうすると、被告人には前科前歴がなく、これまで自営業などをして独力で生活してきたこと、本件につき反省していること、父親が今後の生活指導を誓つていることなど被告人に有利な事情を酌んでも、被告人に対し懲役二年(未決勾留六〇日算入)を言い渡した原判決の量刑はやむを得ないというべきであつて、これが重過ぎて不当であるとは認められない。論旨は理由がない。
よつて、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却し、刑法二一条により当審における未決勾留日数中一三〇日を原判決の刑に算入し、当審における訴訟費用は刑訴法一八一条一項本文を適用して全部被告人に負担させることとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小野慶二 裁判官 安藤正博 裁判官 長島孝太郎)
別紙 書証目録
検察官提出のもの
1 中島治康「LSDという幻覚剤について」(警察時報二五巻四号)
2 小林司「幻覚発現薬」(現代精神医学大系一五巻A、薬物依存と中毒I、中山書店)
3 石橋俊実、白橋宏一郎「LSD25による実験的精神障害」(精神神経学雑誌六〇巻一三号別刷)
4 山田俊治「幻覚剤LSDによる実験的精神病の研究」(精神神経学雑誌六一巻一一号別刷)
5 長浜正六「LSDについて」(日本薬剤師会雑誌昭和四三年二、四月号別冊)
6 法務省刑事局編「LSDに関する資料」(昭和四六年五月一一日指定地検察庁麻薬係検事協議会配布資料(六))
7 (一)澁谷健、堀部眞廣「幻覚発現薬とは」(大原健士郎他一名編「アルコール・薬物依存」金原出版株式会社)
(二)小林司「幻覚発現薬乱用の臨床」(前同)
(三)逸見武光「麻薬問題の概観」(前同)
(四)羽賀道信「麻薬依存の臨床」(前同)
(五)栗原久「コカインの薬理作用」(前同)
(六)加藤信「コカイン依存の臨床」(前同)
8 A・Hoffer H・Osmond THE HALLUCINOGENS(幻覚剤)(一九六七年アカデミツクプレス)五頁
9 有限会社アメリカIMS作成「薬物乱用警報網(DAWN)一九八〇年年間報告」
10 「サイエンス」(一九七一年四月三〇日号、一七二巻三九八二号)
11 国連経済社会理事会により採択された決議「麻薬の国際統制、一一九七(XLII)、LSD及び類似物質について」(一九六七年五月一八日)
12 世界保健機関執行理事会事務局長報告「麻薬に関する国際条約についての行動、ある種の依存性形成薬物のための統制措置」(一九六七年一月六日)
13 M・Shepherd Lysergic acid diethylamide(LSD)(Handbook of Psychiatry 2 一九八三年、二三五、二三六頁)
14 国際連合、CONVENTION ON PSYCHOTROPIC SUBSTANCES 1971(向精神剤に関する条約)
弁譲人提出のもの
1 A・ホツフマン、福屋武人訳「LSD幻想世界への旅」(新曜社)
2 大原健士郎「幻覚剤と人間・社会-薬物依存の精神病理」(少年補導昭和五三年七月号)
3 吉田集而「人にとつて麻薬とは何か-麻薬の文化人類学的考察」(前同)
4 逸見武光「法的規制」(現代精神医学大系一五巻A、薬物依存と中毒I、中山書店)
5 アンドルー・ワイル、名谷一郎訳「ナチユラル・マインド」(草思社)
6 A・ハツスレー、今村光一訳「知覚の扉・天国と地獄」(河出書房新社)
7 チヤールズ・A・ライク、邦高忠二訳「緑色革命」(早川書房、二七二、二七三頁)
8 フランク・バロン、マレー・E・ジヤービツク、スターリング・ビユンネル、星野命訳「幻覚をおこす薬」(別冊サイエンス、日本経済新聞社)
9 マリフアナおよび薬物乱用に関する国家委員会第二次報告「アメリカにおける薬物使用、今後の問題点」(一九七三年三月)
10 アンドルー・ワイル、上野圭一訳「人はなぜ治るのか」(日本教文社)
11 W・バン・ドウゼン、豊村左知訳「LSD25と禅」(大法輪、昭和三六年一〇月号)
12 カール・R・ロジヤーズ、村山正治、尚子訳「結婚革命」(サイマル出版会)
13 Norman.I.Dishotsky他三名、LSD and Genetic Damage(SCIENCE 一九七一年四月三〇日、一七二巻三九八二号)
14 細谷英吉「依存性薬物の分類および解説」(現代精神医学大系一五巻A、薬物依存と中毒I、三四、三五頁)
15 井村宏次「製品づくりのサイ・テクノロジー(上)」(精神科学昭和六〇年五月号、三九巻五号)
16 週刊文春昭和六〇年五月一六日号、三一ないし三四頁
17 「麻薬を指定する政令の一部を改正する政令の公布について」(昭和四五年二月一六日厚生省薬務局長通知、薬発第一三二号)
18 井村宏次「サイ・テクノロジー」(工作舎、三二〇ないし三二三頁)